ハクと出会ったのは、平成19年7月。         
「犬と一緒に暮らしたい」という夢を叶えようと、
その日は朝から夫婦でペットショップまわりを
していました。                      
主人の希望は「チワワ」。
二件目のお店で、値段もお手ごろな
チワワの赤ちゃんが何匹かいたので、
「もう決めようか」という雰囲気になっていました。.
「あと一軒だけまわってから決めよう」ということに。前に行ったことのあるペットショップに
車を走らせました。                            

でも、そのお店は、他の店より値段が高くて、
私たちの予算では到底手が届きませんでした。 
店を出ようとしたところ、入り口で
「白いチワワ里親募集」の張り紙を見つけました。  店のオーナーらしきおじさんに聞いてみると      「ああ、でもあの犬噛むんですわ・・・。」と
微妙な応対で、「やっぱり子犬を売りたいん
だろうな。」と内心思いましたが、
一度見せてもらうことに。
店の裏のガレージのようなスペースに、
狭いゲージが山済みにされていて
(あとで知ったのですが、それが
ペットホテルのスペースでした・・・。)    
そのゲージのひとつに、ハクが身を縮めて
私たちの様子を警戒のまなざしで
うかがっていました
    
おじさんの話では、飼い主の女の子が
ホテルに預けたまま引き取りに来ず、
住所のアパートに行ってみると
引越しした後だったとのことでした。
男の人が手を出すと噛むので「男の人に
虐待されていたに違いない」と話してくれました。
可愛そうに思ったけれど、初めて犬を飼う
私たちにはちょっとハードルが高いように
思いました。けれど、おじさんの
「血統証もないから、繁殖用にも使えない。
このままここで飼い殺しにするよりは
誰かに飼ってもらえたらと思ってね。」
というセリフに、ペットショップのイメージとは
かけ離れた冷たい印象を受けました。
いつしかおじさんに代わって、
若い女性のスタッフが私たちの応対を
してくれていました。
その人がゲージに手を入れると
ハクは、お腹をさすってほしいと横たわりました。
そのお姉さんは、ハクのことを
丁寧に説明してくれました。
預けられてしばらくは、ドアが開くたびに
飼い主のお迎えを期待して、振り返っていたが
最近それもなくなったこと。1日2回の散歩のとき
ようやく他の犬に、興味を示すように
なったことなど。
お姉さんがハクの首に、太い縄をかけると
ハクはゆっくりゲージから出て私たちの
周りをウロウロし始めました。
私が「この子は貰い手がなければ、保健所に
連れて行かれるのか?」と聞くと
その人は強い口調で
「そんなことは私たちが絶対にさせません!」
と答えました。

そうこうしていると、しゃがんでいる私の膝に、
ハクが小さな手をチョコンとのせ
私の顔をみつめていました。
「この子が、こんなことするのは珍しい!」お姉さんが褒めてくれました。
私の心は揺れ動きましたが、年齢も、今までのしつけも、病気があるかも
何もわからない。わかっているのは「ハク」という名前だけ・・・。
私が決められないでいると、主人が「うちに来るか?」と一言。
主人はいろんな可愛い子犬をみても、中々決められないで
何件もショップまわりをしていたのに。
でもその一言は、私の背中を押しました。
とにかく必要なものを、そのショップで最低限揃えて
ハクを我が家に連れて帰りました。

連れて帰ってしばらくは、お互い緊張しながら
様子を伺っていました。
散歩に連れて行くと、道行く人に「かわいい!」と
声をかけてもらい、「へえ、ハクはかわいいんか・・・。」
と思いました。当時は「かわいい」という思いより
「不憫」という感情が先に湧いていたと思います。
餌を食べない、ウンチをしない、下痢はするし、耳は垢だらけ
皮膚は荒れてぶつぶつが出来ていました。
いつも不安で、犬を飼っている姉に毎日電話で
相談していました。

ハクは慣れてくると、我が家とマンション周囲を
自分の「縄張り」ととらえるようになり、激しく吠え始めました。
また、自分の身を守る術は「噛み付くこと」ととらえている
ハクは不安や恐怖を感じると、私たちに容赦なく
噛み付きました。特に主人は何度も噛まれ、真夜中の
流血騒ぎは一度や二度ではありませんでした。
私も主人もハクを手放そうとは、さすがに思いませんでしたが
何度も自信を失いかけました。ハクを手放した女の子
の立場がなんとなく想像できるように思いました。

けれどハクが我が家に来てくれたことで
嬉しいこともいっぱいありました。
まずは夫婦の会話や出かける機会が増えたこと。
「犬と一緒に出かけられるところ」を二人でいつも探しています。
そして、近所に知り合いやお友達が出来たこと。
ハクを飼いはじめたころ、一人で悩んでいたことも
話をしてみると、ウチ以外でも同じようなことで悩んでいた人がいたり
今では「ウチの子も前はそうでしたよ」なんて
偉そうにアドバイスなんかしています。

ハクとの生活は一筋縄ではいきません。
三歩進んで二歩下がる。何かのきっかけで、恐怖を感じてしまうと
反射的に噛み付いてしまう。
本当に難しい子です。
でも時折見せる「俺はお前を噛みたくないんだ」という
ハクなりの訴えるような威嚇のポーズ。
噛んだあとに私たちを見て震える姿。
「ハクを見捨てるわけにはいかない」と親心が湧いてきます。

これからもハクと呼吸を合わせながら、
毎日暮らしていきます。
いっぱい褒めて、いっぱい叱って、いっぱい愛して
いろいろあるけど「おいっちに、おいっちに」
三人四脚プラス二脚、転んだり休んだりしながら
一緒に暮らして行きたい私たちです。

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